民法改正 ~令和2年4月1日から賃貸借契約等に関する民法のルールが変わります。~

 

・パンフレット「賃貸借契約に関するルールの見直し」(PDFファイル

主な変更点

* 賃貸借継続中のルール  

☆賃借物の修繕に関する要件の見直し  →

①賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し たか,又は賃貸人がその旨を知ったのに,賃貸人 が相当の期間内に必要な修繕をしないとき

又は

②急迫の事情があるとき

には,賃借人が目的物を修繕することができることとされました。

☆賃貸不動産が譲渡された場合のルールの明確化→改正後の民法では,賃貸借の対抗要件を備えていた場合に,賃借物である不動産が譲 渡されたときは,賃貸人としての地位は,原則として不動産の譲受人(新たな所有者) に移転するという規定を設けました。 また,不動産の譲受人(新たな所有者)が,賃借人に対して賃料を請求するためには, 貸借物である不動産の所有権移転登記が必要である旨の規定を設けました。

* 賃貸借終了時のルール  

☆賃借人の原状回復義務及び収去義務等の明確化 →改正後の民法では,賃借人は,賃借物を受け取った後に生じた損傷について原状回復 義務を負うこと,しかし,通常損耗や経年変化については原状回復義務を負わないこと を明記しました。

☆敷金に関するルールの明確化→改正後の民法では,これまでの実務に従い,敷金を「いかなる名目によるかを問わず, 賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的と する債務を担保する目的で,賃借人が賃貸人に交付する金銭」と定義しました。 その上で,判例に従い,賃貸借契約が終了して賃借物が返還された時点で敷金返還債 務が生じること,その額は受領した敷金の額からそれまでに生じた金銭債務の額を控除した残額であることなどのルールを明確化しています。

*賃貸借契約から生ずる債務の保証に関するルール

→今回の法改正では,極度額(上限額)の定めのない個人の根保証契約は無効と するというルールが新たに設けられました。

(※「根保証契約」とは,将来発生する不特定の債務について保証する契約をいいます。例えば, 不動産の賃借人の一切の債務の保証がこれに当たります。根保証契約を締結して保証人とな る際には,主債務の金額が分からないため,将来,保証人が想定外の債務を負うことになり かねません)

個人(会社等の法人以外の者)が保証人になる根保証契約については,保証人 が支払の責任を負う金額の上限となる「極度額」を定めなければ,保証契約は無 効となります。この極度額は,「○○円」などと明瞭に定め,書面に記載しておか なければなりません。

また,個人が保証人になる根保証契約については,次の事情(元本確定事由) があったときは,その後に発生する主債務は保証の対象外となります。

①債権者が保証人の財産について強制執行や担保権の実行を申し立てたとき

②保証人が破産手続開始の決定を受けたとき

③主債務者又は保証人が死亡したとき

*経過措置

改正法では,賃貸借に関するルールの見直しを含む改正事項について, どのような場合に改正後の新しい民法が適用され,どのような場合に改正 前の民法が適用されるのかを明らかにするルール(このルールを「経過措 置」といいます。)が定められています。 賃貸借や保証などの契約については,原則として,施行日より前に締結された 契約については改正前の民法が適用され,施行日後に締結された契約については 改正後の新しい民法が適用されます。

☆ 民法改正 賃貸契約書賃貸借契約で押さえておきたい 民法改正のポイント

☆住宅の賃貸借も含めて、契約に関する基本的なルールを定めた法律が民法です。この民法の債権関係(契約等)の規定について、明治29年(1896年)の制定以来約120年ぶりとなる大きな改正がなされました。

民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)

  • ・成立:平成29年5月26日  ・公布:同年6月2日
  • ・施行:平成32年(2020年)4月1日

 住宅の賃貸借に関わるところでは、次のような、賃貸借終了時の敷金返還や原状回復に関する基本的なルールが、法律に明記されました。

  • ・敷金は賃貸借が終了して賃貸物の返還を受けたときに賃料等の未払債務を差し引いた残額を返還しなければならないこと(第622条の2)
  • ・賃借人は通常損耗(賃借物の通常の使用収益によって生じた損耗)や経年変化についてまで原状回復の義務を負わないこと(第621条)など

 これらの敷金返還や原状回復に関する基本的なルールは、今回の改正で法律に明記されましたが、すでに判例によって確立されたものと変わりはありません。 

 また、他には、不動産賃貸借の保証契約(借主の賃料債務や損害賠償債務を保証するもの)について、個人が保証人となる場合、極度額(保証の限度額)を定めなければ、無効となり(第465条の2第2項)、しかも、この極度額の定めは、書面で行わなければ無効となる(第465条の2第3項)、といった法改正などがあります。

  • ・継続的な契約による不特定の債務を対象とする保証契約を「根保証」といいます。例)貸金等の債務の保証契約 不動産賃貸の借主の債務を対象とする保証契約 など 
  • ・平成16年の民法改正で、個人が保証人となる根保証契約のうち、貸金等の債務を対象とするものについては、極度額を定めなければ無効となる旨の規定が設けられました。
  • ・今回の改正は、極度額の定めをしなければならない旨の規定の対象を、貸金等の債務の保証だけではなく、不動産賃貸借の保証を含む、全ての根保証契約にまで拡大したものになります。

・2020年4月1日以降、賃貸借契約の賃借人にかかる保証契約をする場合

極度額の定めをしなければ保証契約は無効となります。

 

 改正民法465条の2第2項

(個人根保証契約の保証人の責任等)

 

第465条の2

1 一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)

であって保証人が法人でないもの(以下「個人根保証契約」という。)の保証人は、主たる債務の元本、

主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について、

その全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負う。

 

2 個人根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。

 

3 第446条第2項及び第3項の規定は、個人根保証契約における第一項に規定する極度額の定めについて準用する。